オーガニック認証で北部を制覇　全株を利用して90項目の製品へと加工
八里観音山にある柚子(ブンタン)園から抜け出すために、林炳昌さんは18歳の時に家を離れて会社員になりました。40歳になり故郷に戻り、数年の時間を費やして徹底的にブンタンの最適化を実施しました。農薬、化学肥料を一切使用せず、2011年にはオーガニック認証を取得し、ブンタン茶、ブンタン酢、醤油、料理など数十種類の派生商品を研究開発しました。毎年3月になると八里にはブンタンの香りが漂います。続いて端午の節句の前後には実が次々と実り、なじみ客から早々に注文が入ります。ブンタンの品質で台湾北部を制覇したことから「北八里、南麻豆」と讃えられています。

ブンタンの品質が優れているだけではありません。園内の「桃楽絲森林レストラン」は壮観で美しいレイアウトになっています。緩い坂道に沿って上に登ると、2本の樹齢40年のブンタンの木が見えてきます。3，4月の花のシーズンにはロマンチックで美しく淡くエレガントな香りが漂います。2本の木の間にある石の階段を上ると屋外でのお食事エリアに到着し、遠くに山と海の美しい景色を眺めることができます。ここには砂場エリアとバーベキューエリアが設けられていることから、親子での旅にも適しています。

ブンタンの根を料理の出汁に　宝柚茶、ブンタン醤油も人気のギフト
農場がレジャー農場に転身した後、レストランと加工品で得た利益は農業を突き動かし、農業もまた観光を突き動かす良性の循環が生まれています。このほか「桃楽絲森林レストラン」で提供されている料理や飲み物には非常に特色があります。特に火鍋のベースとなるだし汁は柚子(ブンタン)の根と一緒に煮込んでおり、甘く爽やかな味わいが楽しめます。柚香猪足(ブンタンの香りの豚足)、柚香鶏腿(ブンタンの香りの鶏もも肉)のどれもが林炳昌さんが研究開発したものです。壁に飾られている陶芸作品もまた、オーナーの手作りと趣味によるものです。
八里柚香イメージ館には多くの加工製品が陳列されており、現在約90種、すべて自家製のオーガニックのブンタンを使用して作製されています。柚子(ブンタン)の葉で造った手作り石けん、入浴用バッグ、果実で作ったアイスキャンディーや茶、果皮で作ったアロマオイルなどがあります。このほか宝柚茶、柚子(ブンタン)醤油などもとても人気のある手土産です。体験イベントでは柚子(ブンタン)の手作り石けんDIY、盆栽作製、醤油のDIYなども楽しめます。

無償の生命を拒み有償のブンタンと引き換え　　オーガニック栽培の信頼を獲得
「柚子(ブンタン)は石と同じだ、重すぎる！」60歳近い林炳昌さんは袋わけされた柚子(ブンタン)を担ぎながらぶつぶつつぶやいています。しかし父の林進興さんから生前に言い聞かせられていたことを思い出して、笑いながら山エリアの果樹園で忙しく働いています。「父が亡くなる前、子孫がこの果樹を処理してしまい、魂が戻って来て柚子(ブンタン)園を見つけられなかったらどうしよう、と言っていました。」父親を安心させるため、家を離れて20年になる息子はついに帰郷し栽培事業を受け継いだのです。
「初期には収穫量を確保するため、父は習慣的に農薬と化学肥料を施していました。しかし体に対する非常に恐ろしい危害があります。私は無償の生命を使って有償のブンタンと交換したいとは思わないのです。だから農薬、化学肥料を一切使用していない栽培方法を採用しています。」しかしそれから売れ行きが悪くなりました。果皮には黒い斑点が多いからです。ある年百貨店のブースで販売促進していると消費者から直接「なんて醜いんだ、どこで拾ってきたブンタンだ！」と言われたのです。
林炳昌さんは非常に申し訳なく思い、土壌と栽培方法を研究する決心を固めました。後に手作業で除草している際、草むらの中に完璧に成長した、果皮の色つやも美しいブンタンを発見したのです。切り開いて味わえば口当たりも甘さもちょうど良く、枝葉を修正して接ぎ木し、種を選び袋をかけました。また一部のブンタンの木を切り倒し、優れた距離と風通しを保つようにしました。長年の改良と観音山の火山土壌岩と十分な日照により、栽培されたブンタンの果肉は甘く香り高く、口当たりもきめ細やかでついに消費者から好評を博すようになったのです。

現在園内には約40本の果樹が栽培されています。樹齢はどれも40-50年の間の老木で、毎年1万斤(約6000キロ)が収穫できます。林炳昌さんが栽培を引き継いでから20年間の成績は顕著なものであり、宝柚茶、酢、醤油、アイスキャンディー、クッキー、お菓子、ケーキ、シャンプー、シャワージェル、紅茶、ハーブウォーターなどの株全体を利用した優れた加工食品を作製しています。林炳昌さんは「父は時々夢で逢いに来ます。夢の中での父は静かで何も言いません。歩きながら見て回っているのです。」友人は笑いながら、父親は息子の努力が実を結んだことを黙認しているんだと言っていました。